ハリケーン「サンディ」 ― 2012/11/02 22:31
ハリケーン「サンディ」
10月末にハリケーンサンディがアメリカ北東部を襲った。強風や高潮で被害が出た。カリブ海やカナダでの死者を合わせると150人以上が亡くなったらしい。ニューヨークを含む広域で大規模な停電も起こった。
ニューヨーク付近に住む一部のアメリカ人はこんなこと初めてと騒いでいるようだが、実はそうではない。ニューヨーク付近は、過去にもハリケーンに襲われている。有名なのは1821年のグレート・セプテンバー・ゲールと名付けられた嵐である。当時はまだハリケーンという言葉は一般的でなく、ハリケーンなどによる強風はゲールと呼ばれていた。このハリケーンによる高潮でハドソン川があふれマンハッタンは水浸しになり、やはり大きな被害を出している。
当時は、ハリケーンなどの嵐は構造を持って移動するということもわかっていなかった。そして、このグレート・セプテンバー・ゲールをきっかけに、ハリケーンのような暴風雨の構造の研究が始まった。その記念碑的なハリケーンが、今回のサンディと似たコースを取っているのだ。
iPS細胞によるノーベル賞 ― 2012/11/08 20:54
遺伝子の中に、細胞があらゆる細胞に分化するための設計図がある。その設計図は分化した後も細胞の中に残っている。その発見がジョン・ガートナーが共同受賞をした理由。
実際に細胞の分化を起こさせるためには、細胞の「初期化」を起こさなければならない。そして、この初期化を誘導する因子、遺伝子を探す必要があるが、候補は数万もあった。ちょうどその時に、偶然に理化学研究所の林崎先生がネズミの遺伝子がどこに働いているかというデータベースを公開した。そのため、初期化因子の候補は数百に絞られることになった。
さらに、これを24個まで絞り込んだが、これからが難関だった。どの遺伝子が関係しているかしらみつぶしに調べていくと、関係している遺伝子の数もわからないため、組み合わせは膨大な数になる。ここでポスドクの高橋学生が、逆転の発想で、組み合わせるのではなく、全体の24個から1個ずつ抜いて、どの遺伝子が関係しているか特定していくという考え方を提案する。これによって、4個の遺伝子を特定することが出来た。たった4個だった。
そして、その遺伝子を使ってiPS細胞を作れることを何度も確認した。これによって、山中教授は、この遺伝子を使えば細胞を初期化してiPS細胞を作れることを実証した。(NHK サイエンスゼロより)
林間残照図 橋本雅邦 ― 2012/11/27 22:26
林間残照図
橋本雅邦
美の巨人たち(キリン提供)より。橋本雅邦は、元は正統的な狩野派の画家だが、その伝統を破って新しい日本画を創造した。この絵は、1903年にセントルイス万博で最高賞を受賞した。
明治に入って、日本の欧化政策で日本の絵画は風前の灯だった。彼は、狩野派の画家だったが、仕事が無く海軍で西洋画と出会い、西洋の技法を研究した。当時、フェノロサが伝統的な日本の画法を日本画と命名。岡倉天心が世界に通用する日本画を作らないかと橋本雅邦に提案する。その中で、この絵は日本政府から国策としてセントルイス万博に出品するために作成を依頼される。当時の国威発揚のために、個人の名声を超越して出品したものに違いない。その重責は、現代の平和かつ安泰な生活からは想像を絶する。
林間残照図は、一見、西洋画風であるが、山水画の骨格を持っている。木立は線が細くフランス画風。空気遠近法にて奥行きを出している。一方、山肌や川は、典型的な狩野派の輪郭線で、その質感を高めている。上半分近くは何も描かれていないが、山水画同様にそこが核心となっている。新しい日本画の登場である。
弟子に、横山大観、菱田春草、下山観山などがいた。彼らの絵が朦朧体に走った際に、絵は技術でなく心持ちであると自らの絵で示した。

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