バックビルディング2012/08/12 07:01

バックビルディング

 

大量の雨が降り続くというのは、そう簡単ではない。大気中の水分(水蒸気)というのは、いわば「もの」であって(これを専門的には保存量という)、大気中から雨となって地上に落ちてしまえば、どこかから水蒸気を補給しなければ、それ以上雨が降り続くことはない。直上の大気が保有している水蒸気量は、降水量に換算するとせいぜい数十ミリ程度(これを可降水量と呼ぶ場合がある)であり、補給がなければ最大降ってもその程度ということになる。そして、個々の積乱雲の寿命は、自分が持っている水蒸気を使い果たすと衰退する。そして、それはだいたい数十分から1時間程度である。さらに雲は風に乗って動くので、同じ所に留まることは少ない。夏の夕立などが、降っても数十ミリ、時間もせいぜい1時間程度で終わるのは、このためである。

 

しかし、何らかのメカニズムで湿った空気が流れ込み続けると事情は変わる。積乱雲は、衰退する際に、降雨によって上空の冷気を引き下げ、低層に残す場合がある。そこに湿った空気が流れ込むと、水蒸気を含んで軽く、かつ温かい空気が、風上側で低層の冷気に乗り上げて、再び積乱雲を作ることがある。

  この雲が風に乗って流される方向と逆の風上(雲が流れる後ろ側)につぎつぎに積乱雲が出来ることをバックビルディング(後方生成)と呼ぶことがある。積乱雲の衰退・発達の時間と、風の強さの条件が揃えば、同じところで、積乱雲が発生し続け、強い雨が長時間継続する。九州北部豪雨の原因の一つは、このバックビルディングによって同じ所に積乱雲が発生し続けたことにあるとされている。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://korechi.asablo.jp/blog/2012/08/12/6538742/tb